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コテージに帰ると言いようもない疲労感に襲われた。
ベッドに倒れこむ。
懐にしまい込んだ写真を取り出して眺める。この瞬間がアタシのリフレッシュタイムってわけだ。
みんなの笑顔を見ていると疲れも吹き飛ぶってね。
あっ・・・・・・
急に証拠を突き付けられた気分になった。
アイツの写真、アイツの笑顔、そのほとんどが一人に向けられていることに気が付いた。
ははは、もう、知らないふりなんて出来なくなっちゃったね。
そうだ、アイツは千秋ちゃんに。千秋ちゃんもアイツに。
恋、しているんだ。
そうして一枚の写真に辿り着く。
二人が向かい合って笑い合っている写真。
素直にとてもきれいな写真だなって思った。その次に少し悲しい気持ちになった。
「こんな気持ちになるなんて、ほんっと何考えてるんだろ、アタシってば」
アタシにはここに来る前のみんなとの記憶がない。それはみんな同じことなんだろうと思う。
ここに来る前のアタシとアイツってどんな感じだったのかな。
記憶喪失になっても潜在意識とかいうものは残っていて、同じ人を好きになるとか、そういう話を昔聞いたことがある。アイツと千秋ちゃんはここに来る前から、そういう関係だったのだろうか。だから、ここでもお互いのことを想っているような気がするのだろうか。アタシは、どうだったのだろうか。ここに来る前のアイツにはアタシはどう映っていたのだろうか。
「わかんないよ、もう」
昨日のことが頭に浮かぶ。
「でも、前よりはカメラに興味が出てきたかもな、小泉のおかげかもな」
「おい!撮るなら撮るって言ってくれよ」
「俺なんかでよければ、またいつでも小泉の写真撮ってやるからな」
「もし、ここから出られたら、古いカメラでよければ、日向にあげる。それで、撮り方も教えてあげるからさ」
「だから、ここから出たらさ、あ、やっぱ何でもない、じゃあね!」
あの後にこっそりと撮った日向の写真。アタシの胸ポケットに入っている彼の写真。
今までで一番いい顔してた。
あの言葉の続きを言うためにも、アタシは生き残らなくっちゃ。
この、好き、を日向に伝えるためも。
今日はやけに波の音が騒がしいような気がした。
そういえば女の子みんなは泳ぎに行くとか言ってたっけ。
アタシは日寄子ちゃんと約束があって待ち合わせだ。
さぁ、行こう。
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