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「美咲ちゃんて言うことが大人やわぁ」
従姉妹たちが一斉に賛同してうなずくと、今度は堪えきれずに叶多はそっとため息をついた。
それからはあちこちに話題が散らばりつつ時間がすぎた。
叶多は『あとでな』をすっかり忘れ、戒斗が近づいてきたことにも気づかなかった。
「叶多」
驚いてびくっとした手からガラスコップが滑り落ちそうになる。
それを、横から戒斗が手を出してすくった。
「戒斗!」
「来て」
問い返す間もなく、戒斗はコップをテーブルに置くと、叶多の背中を押して連れだした。
背後でちょっとしたどよめきが起こったけれど、振り向く勇気はない。
「戒斗、こういうとこでは足音立ててもいいと思う」
あとで女の子たちにどう言い訳しようかと考えながら、叶多は文句を言った。
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