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叶多が少し口を尖らせると、不意打ちで戒斗の顔が近づいた。 「戒斗っ」 叶多は犬みたいに二歩くらい飛びのいた。 それを見て戒斗がにやつく。 戒斗にとって叶多は完全に玩具化していて、いまも明らかに反応をおもしろがっている。 「叶多は何も言わなくていい。行くぞ」 叶多は渋々とうなずいて、さきを行く戒斗のあとを追った。 拗ねた気分が緊張を少し緩くした。 いつかは、と思っていたし、ここで会って、無視できない事実があるにもかかわらず知らないふりをするのも気まずいと感じていた。 親族との歓談は一巡したのか、戒斗が空けさせていたのか、有吏本家は一つのテーブルを独占して一堂に会していた。
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