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「まあ、仕方がない。俺一人で行ってくるよ。少し遅れても来られるといいな」
元々、山瀬が秦野青嵐に会いたかっただけだからか、あっさりと言う。
ではなぜ、今回は征治にも同席を勧めたのか今更になって気になったが、それは明日打ち合わせに間に合えばわかるかも知れないので、口には出さなかった。
結局、打ち合わせ当日の朝10時半過ぎにやっと新千歳から飛び立つことができ、何とか1時過ぎには目的地に辿り着けることになった。
月野珈琲店に着き、店員に個室前まで案内される。この店は個室と言っても各部屋のドアの上半分はガラスで、近づけば外からも中の様子が見える。
山瀬とテーブルを挟んで座っている男が二人。
顔は見えないが、一人はスーツを着ているから多分出版社の担当者で、その奥に座っているカジュアルなジャケットを着て緩いパーマの少し長めの髪の若い男が作家の方だろう。
征治はコホンと咳ばらいをしてから、ドアを開けた。
「遅れて申し訳ありません」
続けて名前を名乗ろうとしたとき、ちょっとした騒ぎが起きた。
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