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悩んだ末、二人には何も告げずに治験をしてくれる病院へ移り、移植手術を受けた男の視力は、無事に回復する。
そして男がまぶしそうに目を細めながら病院を出ていくところで話は終わっている。
結局この男がその後どうしたのかは書かれていない。
しかし、読み終わったあと、征治はしばらくこの話の続きを色々と想像した。そして無意識のうちに、それぞれが善人である3人ともに救いのある結末へ持っていこうとする自分に苦笑したのだ。
ふと、秦野の方に意識を戻すと、山瀬が問いかけてからかなり時間がたっているのにキーボードを見つめたまま固まっている。そしておもむろに指を動かし始めた。
『夢を、見てしまったんです。
誰かが僕の 』
そこまで表示されたところでピタリと秦野の動きは止まってしまった。
なんだ?と思った瞬間、文字が全部消され画面が真っ白に戻る。しかし、すぐに秦野の指がものすごいスピードでキーボードをたたき始める。
『せっかく私の小説に興味を持っていただいたのに、申し訳ありません。
やはり、作品が何かのコンテンツになったりするのは、私には荷が重いです。
お断りさせてください』
秦野以外の3人がえっ?と驚いて、本人を見る。しかし、彼は俯いたまま指を動かし続ける。
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