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2人は身支度を整え、小屋の引き戸を少しだけ開けて外の様子を覗いた。
「まだ降ってる?」
「うん」
「そっか……」
事後の気怠い感じをお互い背負って、床へ腰を下ろす。
「あ、そうだ」「あ、なぁ」
一拍の間を置いて、雫と楓は同じタイミングで声を発した。
「雫、先にいいよ」
「いい?じゃ、先にごめん。えっと……楓は進路どうするの?」
気になっていたことだった。
聞いたところで成績優秀な楓と同じ学校へ進学するなんてことは無理だろう。
けれど近くにいたい。
「俺は地元の大学に推薦が決まってて、そこに」
「あぁ、やっぱり」
「……ていうか雫はどうするの?」
「俺は特にやりたいことが見つからなくて……得意なことと言えば、……実は家事だったりするし……」
父親の転勤続きで同じ土地に腰を落ち着けることが出来なかったから、あまり深く自分のやりたいことを考えることが出来なくて、就職することも選択肢の中に含めていた。
けれどそんなの勉強したくない人間の言い訳だ。
「家事が得意なの?あ、だから雫の手、いつも荒れ気味なのか?」
「うん。父親と2人だからどうしても家事はやらざるを得なくて。でもやってみると案外楽しくて」
「そっか、すごいな雫。俺なんか卵一つまともに割ることも出来ないのに」
「え、ほんと」
「ほんとほんと。じゃあさ、この先決まらなかったら俺の奥さんになればいいよ」
「奥さん!?え、楓、ばかみたい!ちゃんと……、ちゃんと進路考えるよ。楓とはずっと一緒に居たいから」
「うーん冗談じゃないんだけど。まぁいいや、お互い頑張ろうな、雫」
「うん。楓は?何か俺に聞きたいことがあったんじゃないの?」
「ある。雫の誕生日いつ?」
「4月23日。なんで?」
「そっかぁ。実はさっきあげたハンドクリーム、楓にプレゼントしようと思って買った物に間違いないんだけど、何もないのにただあげると下心見え見えかなって思って誕生日に渡そうと思ったんだ。でもとっくに過ぎてたし、結局俺の勘違いで衝動的に渡しちゃったけどさ」
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