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「うひゃうっ!」
突然背後から掛けられた声に驚き雪音はまた跳び上がった。図星を指されたというより、思いも寄らないタイミングで話しかけられた単純な驚きだ。
振り返ってみると彼女の後ろに大柄な女が立っていた。
雪音と頭一つ分、は大袈裟かもしれないがそれくらい身長が違う。
一瞬男? とも思ったがその胸部についている揺れる大きな二つの塊は女性の象徴だった。顔立ちも小綺麗に化粧をしていて香り立つような色気がある。
「ああ、驚かしてゴメンよ。アタイは恋する女の子が好きなのさ」
そう言って女は目尻を下げて笑った。
「こっ、恋とか! そういうんじゃないんです! 友達って言ってくれただけでもう十分なんです」
「そうかい? でもアタイの目は誤魔化せないよ? だってアンタ可愛いもの」
「かっ……可愛い!?」
雪音は紅く染まった頬を両手で押さえた。
「そうさ。恋する乙女の顔をしてるよ。恋は女を可愛くするのさ。こんなアタイだってあの人の近くにいれば乙女になれるのよ」
「へ?」
「アンタはいいわね。好きなコと近くにいられるんだから。アタイだってボスに会いたいよ……」
女は目を伏せ、切なげな表情をする。
彼女は「ボス」という人が好きなんだ、と雪音は思う。
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