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超自然現象である『魔法』が席巻する時代に生まれた東城達には、例えば富士山が人々を魅了してやまない存在だったとは露ほどにも信じていない。
『魔法』という存在は、山をただの土と石の塊に、海をただの水たまりに変えた。
奪うことなど絶対不可能だと思われていた「信仰の自由」さえも『統一政府』は握り潰してしまった。山岳信仰、神への冒涜などもはや死語だ。
かつての世界の問題を『魔法』は悉く解決してきた。
その中でもっとも手強いのは「宗教問題」であろう。エネルギー問題等とは違い、人の心の平穏が関与するからだ。
だがそれでも『魔法』『統一政府』はそれを解決した。方法は簡単、人々から信仰心を毟り取ったのだ。
「お二人ともどうぞ」
彼女は雪音の隣に座り、膝の上にトレー置き二人にカップを渡した。
躊躇う二人の様子を見て彼女は笑顔を見せた。
「お気になさらず。私からの奢りです」
パンパンに張った艶のある頬の肉を上げて笑う顔に裏はないように見えた。
だが女に対して『相応で正当な』警戒心を持っている東城は彼女の裏を何とか見つけようと一挙手一投足を観察し続ける。
彼女は匙でアイスクリームを掬い取ると目を細めたままそれを口に運び、何とも幸せそうな顔で味わっている。
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