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「雪音?」
「うぅ……一体どうしちゃったんでしょう」
黒いとんがり帽子に黒いマントを身に着けた『正統派魔女っ子』スタイルの小柄な少女がオロオロしている。
彼女はこの少年・東城大和を居候させている家の主だ。(彼の家は魔法使いのせいで壊滅的被害を受けているため、彼女が彼を家に呼んだのだ)
「どいつか知らねえけど、こんな大掛かりな魔法使いやがって。何が目的なんだか」
「誰だか知らない」ではなく「どいつかは知らない」としか言えない我が身を少し哀れに思う。
それでも彼は一つの要素に安心していた。
詳細は省くが世界を手にする素質のある『魔女っ子』・宇佐川雪音が巻き込まれていることに、この状況を打破できる可能性がある。
東城は周囲を見渡した。
「そっちはもう耕したわよ!」
「全然耕せてねぇじゃねえか。俺に任せとけよ」
脇の畑で男女の諍いの声がした。
ーーあの男、あんな言い方したら殺されるぞ!
次の瞬間に女の魔法により男の体中の水分が沸騰する。
男は泣きながら命乞いし、女はあざ笑いながら男が死ぬギリギリまで魔法の手を緩めない。
そんな一瞬先の未来を東城は想像する。
相手が死ななきゃ女は何をしてもいい。それが彼の住まう世界の「日常」だからだ。
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