第一章 幽霊タクシー

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「先生。  余計な詮索はせんでええ。  やるのか?  やらないのか?」  眼光鋭い幕田の祖母が自分を見据える。  ひっ、と思った。  幕田、このばあさんの血を一滴も引いてねえな。  存在感ハンパねえ。 「先生、先生。  宿代だけで、今月の予算オーバーですっ」 と深鈴が袖を引いてくる。 「わ、わかってる。  事件を引き受けるのはいいが、年寄りから、あんまり金を貰うのは……」 「私は年寄りではない」 と幕田のばあさんは言う。  さ、さようでございますね、と思いながら、 「わかりました。  では、とりあえずお引き受け致します。  でも」 と晴比古は、一応断りを入れた。 「……どんな結果になるかわかりませんが」  幕田の祖母は、うむ、と頷く。  こええよ、何処の女帝だよ。  着てるものは、普通のおばさんの服だが、威厳がありすぎる。
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