第一章 幽霊タクシー

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   帰りのタクシーは、幕田も同乗することになり、男二人に挟まれたくないのか、深鈴は助手席に行ってしまった。  菜切がちょっと嬉しそうだ。 「幕田。  お前のばあさん、名前は春子か?」  あのジジイ、確か、ハルさんと呼んでたな、と思い、訊いてみる。 「片仮名で、ハルです。  HALとか年賀状とかには書いてましたかね」  なんとなく、あのばあさんらしいな、と思ってしまった。 「元気なばあさんだな。  いや、ばあさんと呼ぶには若いか」 「そうですね。  昔の漫画とか見ると、孫の居る世代って、すごい年寄りに描いてあるけど。  いまどきは、全然若いですよね」  そのとき、助手席に座って、前の道を眺めていたせいか、ふいに深鈴が訊いていた。 「そういえば、菜切さん。  例の幽霊が出る通りって何処なんですか?」
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