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「幽霊っていうか。
ただの、晴れでも傘を持っていて、居なくなったあとに、ぐっしょり座席が濡れてるだけの人ですけどね」
人には幽霊話だと語りながらも、それは単に客を盛り上げるためなのか。
実際には、自分が霊を乗せたとは認めたくないらしく、菜切はそんなことを言ってくる。
「そういえば、座席に置いてあった傘はどうなったんだ?」
「触るのも気味悪かったんですけど、置いておくのも嫌なので、確か、タクシー会社の傘立てにさしましたよ」
そのあとどうなったかは知りません、と言う。
「その客、シートベルトしてなかったんだろ?
後部座席とは言え、怪我しなかったのかな?」
「幽霊が怪我しますか?」
と幕田が余計な口を挟んでくる。
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