第一章 幽霊タクシー

103/115
前へ
/477ページ
次へ
「幽霊っていうか。  ただの、晴れでも傘を持っていて、居なくなったあとに、ぐっしょり座席が濡れてるだけの人ですけどね」  人には幽霊話だと語りながらも、それは単に客を盛り上げるためなのか。  実際には、自分が霊を乗せたとは認めたくないらしく、菜切はそんなことを言ってくる。 「そういえば、座席に置いてあった傘はどうなったんだ?」 「触るのも気味悪かったんですけど、置いておくのも嫌なので、確か、タクシー会社の傘立てにさしましたよ」  そのあとどうなったかは知りません、と言う。 「その客、シートベルトしてなかったんだろ?  後部座席とは言え、怪我しなかったのかな?」 「幽霊が怪我しますか?」 と幕田が余計な口を挟んでくる。
/477ページ

最初のコメントを投稿しよう!

681人が本棚に入れています
本棚に追加