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「幽霊とは限らないだろ。
菜切は、乗ってきたときは、生きた人間だと思ったんだろ?
じゃあ、生きた人間だったが、事故に遭って、こりゃ、このタクシーは危ない、と思って逃げ出したんだよ」
「でも、他に家とかない場所なんですよ」
と菜切が異を唱える。
「事故したばかりの人間が逃げ出しますかねえ。
怪我してるかもしれないのに」
と言う菜切に深鈴が言った。
「なにかまずい仕事とかしている人で、警察が来たらヤバイと思って、逃げ出したとか?」
うーん、と菜切は唸っていた。
「普通のおじさんに見えましたけどねえ」
そう言ったあとで、苦笑いし、
「あの、みんなには霊ってことで。
客受けのいいネタなんで」
とバックミラーでこちらを見ながら、言ってきた。
調子よく言ってくる菜切の言葉に、
まさか。
よく聞く幽霊タクシーの話って、全部ネタなんじゃないだろうな……と思ってしまった。
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