第一章 幽霊タクシー

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「あの、先生、その方は?」 「ああ、こいつは……」 と説明しかけ、いつの間にか、志貴側に立っている深鈴に、何故、こっちに立たん、とどうでもいいことで腹を立て、つるっとほんとのことを言ってしまう。 「……深鈴の彼氏だ」  えええええっ!?  幕田の悲鳴に、菜切たちも刑事たちもみな振り返る。 「何故ですかっ!」 「いや、何故ですかって、お前、おかしいだろう」  今の言葉への問いかけとして。 「せ、せめて先生だと思ってました。  深鈴さんの彼氏」  せめて先生ってなんだ……? と思っていると、 「せめて先生なら、まだ付け入る隙もあったのにっ」 と嘆き始める。 「帰れ、幕田」 とうるさい幕田の首根っこを掴んで、外に出そうとしたとき、 「兄貴っ!」 とロビーに響き渡る声がし、志貴がぎくりと振り返る。
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