第一章 幽霊タクシー

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 なんかすごい格好の奴が来た……。 「俺、もう上がりっすー。  なにかお手伝いしますっ、兄貴っ」  茶髪に近い黒髪で、やけにガタイがいい。  紫のシャツの背には何故か昇り竜が居るようだ。  何故、昇り竜……。  この手の人たちは縁起を担ぎたがるのだろうか。  胸許の金の鎖も水晶のブレスレットもなんとなく運気が上がりそうだ。 「あー、西島。  別にスーツで出勤しろとは言わないが……」 と言いにくそうにフロント近くに居た男が言う。 「あの人は?」 と幕田が訊いてきた。 「副支配人じゃなかったか?  確か、新田一史(にった ひとし)、四十五歳」  すごく男前という訳ではないが、小綺麗にしている恰幅のいい男だ。
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