第一章 幽霊タクシー

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「おい、志貴。  幕田じゃないが。  なんだこの、二時間サスペンスなら、すぐに殺されそうな下っ端は?」 と言うと、志貴が、 「失礼じゃないですか、先生。  彼、先生より年上なんですよ」 と言ってきた。  ええっ? と晴比古は俊哉を二度見する。 「兄貴っ。  この人、兄貴の舎弟ですか?」 と俊哉が志貴に訊いていた。 「……朝とか見なかったの?  探偵の阿伽陀晴比古先生だよ」  ああ、と俊哉は笑い、 「探偵って、ほんとに居るんすね」 と甚だ失礼なことを言ったあとで、 「阿伽陀って、酒のことっすよね」 と言ってくる。 「よく知ってるな」  阿伽陀は不死の妙薬のことだが、そこから転じて、酒のことも意味する。
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