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「先生」
と水村が微笑み言ってくる。
「またぜひ、遊びにいらしてくださいね」
深鈴が横で渋い顔をしているが、別に自分のことを好きなわけではないのを知っている。
単に親鳥を取られそうな雛の気持ちなのだろう。
新田副支配人たちに見送られ、晴比古たちは菜切のタクシーで宿を出た。
「そういえば、仏像出てこないままでしたね」
と運転しながら菜切が言ってくる。
鍾乳洞の中、あの祭壇のようになっているところに足跡は一人分しかなかった。
菜切の分だ。
小柄な持田なら、菜切のように祭壇の上に上がって取った気がするから、おそらく、意識を取り戻した支配人が持って逃げたのだろう。
そうと思っていたら、やはり、それが正解のようだった。
支配人は仏像を持って逃げた理由については語っていないようだが、もしかしたら、もう一度、殺しの目印を置きに行くためだったのかもしれない。
そして、とりあえず、林の中に隠していたそうなのだが、いつの間にかなくなっていたらしい。
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