第一章 幽霊タクシー

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 ありがとっす、と頭を掻いているが。  いや、待て待て。  若くも見えるが、それ以前に、言動が幼稚というか。  こんなのが三十五歳か。  この先、日本、大丈夫か? という気分にさせられる男だった。  だが、彼の前で順番待ちしている平澤という男は三十二だが、普通に落ち着いていた。  しかし、この西島という男、なにも考えてない分、人が良さそうで、さっきから見ていると、彼を中心に小さな笑いが起こったり、和やかな空気に包まれたりしている。  ともすれば、ピリピリしがちな状況なのに。  リラックスするのは悪くない。  脳がやわらかい状態の方が思い出せることもあるからだ。  まあ、さっきの角材の話のときは、みな、固まっていたが。  こちらを見て、俊哉が真剣な表情で言ってくる。 「兄貴、兄貴って呼んでいいっすか?」 「駄目」  って、もう呼んでるしっ。  僕、君より年下なんだけどっ!?  兄貴はやめて。  戻ってきた深鈴と晴比古が爆笑する姿が頭に浮かんだ。  
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