第一章 幽霊タクシー

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  「それで?」  座敷で定行は晴比古に訊いてきた。 「そのホテルの事件はどうする気じゃ」 「どうもこうも、俺は警察じゃない。  依頼されなきゃ、首突っ込む義理もないし」 と言いかけると、 「じゃあ、わしが依頼しよう」 と定行が言ってきた。 「金ならある」 と床の間から、古いツボを持ってくる。  パカッと木の蓋をあけると、百円玉が小判のようにぎっちり詰まっていた。 「五百円じゃねえのかよ」 「何年かけて貯めたと思っとるんじゃ。  五百円、当時なかったわい」 「……いつから貯めてんだ、ジイさん」  そんなもの貰えない、と晴比古は言った。 「念がこもってそうだからな」
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