第一章 幽霊タクシー

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「じゃあ、こっちをやろう」 と定行は古い和ダンスの引き出しから、封筒を出してくる。 「わしの年金じゃ」 と震える手で出してきた。 「余計貰えるかーっ。  っていうか、そもそも、死にかけのジジイから、そんなに貰えるかっ」  そのとき、庭先から声がした。 「じゃあ、このババアから取れ」  振り返ると、見たことのないおばさんと幕田がこちらを覗いていた。 「おお、ハルさん」 とジジイが立ち上がる。 「元気かの。  ありがとう。  いい探偵さんを紹介してくれて」  これが幕田のばあさんか、と気がついた。  ばあさんと言っても、まだまだ若い。  まあ、幕田も若いからそんなものかと思った。
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