第一章 幽霊タクシー

99/115
前へ
/477ページ
次へ
「私はまだ死にかけてない。  そこのくたばりぞこないより、金もある」 「ハルさんの毒舌、若い頃のままじゃ。  ゾクゾクするのう」 「なんだ、この変態ジジイとババアは」 と言うと、幕田が、 「すみません。  うちのおばあちゃんまで一括りにしないでください」 と言ってきた。 「おかしいのは、定行のおじいちゃんだけです。  この年になっても女好きで」  そういえば、深鈴には草引きさせずに一緒にお茶飲んでたな、と気づく。 「いいんじゃ、ハルさん。  先生、冗談じゃ。  わしは金は持っとる。  傷痍軍人だからの」  ハルはふん、と鼻を鳴らして言った。 「どっちでもいい。  この村で殺人事件とか、もう充分じゃ」 「もう……?」
/477ページ

最初のコメントを投稿しよう!

681人が本棚に入れています
本棚に追加