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健二は野球部に入ってから妙に世間体を気にする様になって、2人きりの時やメール以外では態度を変えなかった。
今の健二はテストは全て100点だけど、あの頃の健二は私が勉強の世話を焼いていて、テスト範囲から知らない大馬鹿健二を赤点にしない為のテスト週間はそれはもう大変だった。
健二は……料理も出来ない。両親が出かけていない日、お徳用パックの8個入り卵をそのままレンジで爆発させて途方に暮れた健二から電話が来る事はもうないんだろう。
優しくなくて、よく……間違う。粗暴で、かっこうつけで格好悪い。それでも、それが今の健二だった事を今更になって思う。じゃあ、その健二はどこにいった?途端に、寒いものが背筋を降りた。
健二はもういないのだ。
そして、
健二を変えたのは、無くしたのは自分だった。
健二を私は殺したのだ。今の健二を見れば見るほど、私は実感する。これは健二では無い。私は健二を殺した。
健二「晴ちゃん、なんで泣いてるの?」
晴香「え?」
私は気付かない間に涙を流していた。
晴香「え?嘘……止まらない……」
健二「ねぇ、晴ちゃんを泣かしたのは僕?だよね」
晴香「!!」
驚くことに健二は、健二だけは全部知っていた。
健二「あの時、白って人が言ったんだ。君が望まないならこの催眠はすぐ解ける。催眠術は永遠じゃないって……」
呆気にとられる私に、健二が笑う。
健二「僕は僕の意志でこうしてる。それでも、やっぱり……今の僕は嫌かな?」
答えはもう出ていた。
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