彼の性格を治してください

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数日前の話だ。私は彼にそれを依頼した。 「彼氏の性格を"治して"下さい」 都心に溢れた高層ビル。賑やかな遊戯施設に、華やかな購買店。香り豊かな飲食店がひしめく場所……でも、それは表の顔に過ぎない。 路地を一つ曲がればそこは大きな闇の世界がある。眩い高層ビル達が生み出す、深くて大きな闇の影。闇の中に潜む多様で審議さえ分からない噂たちがある。時折聞こえる銃声は犯罪組織の集会所があるからだとか、化け物に襲われた様な類の都市伝説は毎日の様に嘯かれる。胡散臭いものから現実的な危険まで闇から聞こえる噂は後を絶たないけれど、闇の中に向かう。それは相当の勇気が必要な行為で、つまりはそれほど切迫した人が立つ最終手段なのだと思う。 優「ねぇ!晴香?聞いてる」 晴香「え!?あ、ごめん……ちょっとぼーっとしてた」 優「晴香……最近そういうの多いよ?悩み事だったらウチら頼れー」 晴香「た、大したことじゃないよ」 私、大野晴香は親友の柏木優に嘘をついた。親友にも言えない悩み事、親友にさえ軽蔑されそうな悩み事が私にはあったのです。 優「晴香のヤツ……結構まいってる。相談すればいいのに……バカ晴香」 未央「晴ちゃんにだって言えない悩みくらいあるよ。それに、ウチは羨ましいけどな……晴ちゃんの家も成績も、それに……」 私の抜けた後に優と未央が話す声が聞こえて、思わず歩を緩めた。 未央「あんなカッコええ彼氏までおって」 未央はグランドを見る。グランドには大きな垂れ幕に【祝・甲子園】の文字。私の幼馴染であり彼氏、織田健二は高校2年にして、この野球強豪校のエースピッチャーをしている。それは彼の誇りであり、私にとっても鼻の高いもののはずだった。
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