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健二「僕はプロ野球選手になるから、晴香ちゃんは僕のお嫁さんね」
今思い返すと恥ずかしいけれど、小学生の頃の健二が言ってくれたその言葉は今も私の大事な宝物だ。
健二「晴香……今日の試合に勝ったら伝えたい事がある……」
中学になった最初の試合。私たちが付き合った日は朝からそんな事を言ったくせに試合で大暴投の大負け。バツが悪そうに告白したちょっとマヌケな彼氏の頬に私はファーストキスをした。きっとこれは一生忘れない思い出として私の心のアルバムに輝くはずだった。
はずだったのに、その思い出の傍に、どうして……。
晴香「こんな思い出いらないのに……」
いらない思い出が埋まり込み、それが綺麗な思い出まで腐らせていく様な不快感が日に日に私の気持ちを落としていった。
晴香「急に会いたいってどうしたの?健二が家に上げてくれるのも珍しいけど……あ、そうそうケーキ作ったよ。優勝した記念!ついに甲子園だねっ」
健二「あぁ、ありがとう。今日はさ、親帰らないんだ」
ドキリとした。いつもより低く聞こえた健二の声に自覚する。今、私は男と2人きりでいる。
肩を掴まれながら思う。私は健二が好き。でも、そんな心の準備は出来ていなかった。
騙された様な状況もあって私は健二を拒んだ。あるいは拒んでしまったからだろうか。健二は頑なになり、私の服も、ケーキも、今までの思い出までもが全部、全部汚れてしまった。
汚れてしまった。
それ以来、私と健二は話をしていない。
汚れてしまったんだ。
あの声は私の知ってる健二ではなかった。あの顔は私の好きな健二じゃない。
汚れてしまったものは……綺麗にしなくてはいけない。
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