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多少の危険なんて、今の私には関係ない。この汚れた思い出を消せるなら何にでもすがりたい。
汚れ纏って闇に堕ちる心境を理解する。つまり、すでに私は闇の中にいたのだろう。
不思議と恐怖が少ないのは、それほど心が絶望しているからだろう。時計を見なければ時間を忘れそうに暗い細道を抜ける。
私は今、探せば殺し屋さえ横行するかもしれない未知にいる。時折鼻を突く腐臭はまさか人では無いだろうが……1・2匹の犬猫の死骸が醸す臭いでは無い。
とはいえ、私は健二を殺すつもりは無い。目的はすでに決まっている。
風が吹き抜けた。途端に道が開けて光が差した。暗かった路地裏を抜けてきた事が嘘の様な空間が広がる。木漏れ日に佇む小さな一軒家と、小さな【白医院】の表札。光の指すその空間だけはなぜか妙な小綺麗さがあって、あぁ病院なんだなと納得してしまう。
白「いらっしゃい……なんだ。迷子か?」
病院に入るとそこは待合所ではなく、すでに診察室の様な空間で、私に話しかけた白衣の男性が医師なのだと自然に納得させられた。
晴香「バカにしないでください……」
医師が私の制服姿を見て小馬鹿にする様に言ったのが無性に腹立たしく、鞄に入れていた100万円の札束を机に投げて見せた。裕福な家である事が手伝ったとはいえ今までずっと貯めてきたお金を使う事には後ろめたさがあったけど、それ以上の不幸が後押しをしていた。
白「……分かった。客に対する非礼は詫びる。で、ここに何を"治し"に来た?」
私はこれまでの経緯を話し、言った。
晴香「彼の性格を"治して"」
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