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ガタン!
机を揺らし、健二が勢いよく土下座した。
健二「どうかしてた!!取り返しがつかない事だと思う……本当に……ごめん!!」
少しだけ驚いた。球児として軌道に乗ってからはプライドの高い印象だった彼が、恋人とはいえ……罪悪感があるとはいえ、女性に土下座をするということは私の予想には無かった。数滴、溢れたコーヒーを横目に私は小さく、動揺した。そして、目を閉じて言った。
晴香「困るよ……そんな事されたら怒れないじゃん!!」
健二「怒らせるために来たんじゃない!やり直したいから来たんだ」
健二「もう、あんな事しない」
晴香「当たり前でしょ!?」
大声で言い返した。初めて、こんな本気で声を張り上げたと思う。自分も、自分を昔から知る健二も少し驚く。でも、話はそこから大きく変わっていく。
健二「あぁ、当たり前だ!晴香との時間、もっと大切にしたい。野球、辞めてもいい」
晴香「!?」
健二が野球を辞める。その言葉で私の中はぐちゃぐちゃになった。健二が野球より私を選んだ嬉しさと、健二の大切なものを奪おうとしている事への戸惑い。最低の思い出から改心してくれた、そんな成長をした健二と作る未来への期待も脳裏に浮かんだ。
健二「俺……いつの間にか逆になってた。晴香喜ばせたくて野球やってたのに、野球ばっか一番になってた」
晴香「……別に……そんな事して欲しい訳じゃないよ」
晴香「健二が……野球、頑張ってたのずっと見てたのよ?」
健二「……でも、それしか俺、せいいの見せようがないし、晴香の方が大切なのマジだから」
晴香「……!!」
困った様に笑った健二はコーヒーを手に取り、口をつけた。
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