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晴香「……健二、こっち、来ていいよ。やっぱりこの距離落ち着かないから」
健二「!……ありがとう……それに本当にごめん」
晴香「謝りすぎ。許せないけど……それも聞きたくない」
健二「うん……」
肩を寄せて、しばらくはそんな話が繰り返された。触れたところから暖かいものが伝わる。声を出す代わりに飲み物を口にする事が増えていく。お互い口数は減っていき、時計の針のカチカチという音が大きく感じられた頃、安心した子供の様な顔で健二は眠っていた。
晴香「…………………………………………………」
私は健二を見て、少し迷っていた。それを察した様にその声は聞こえた。
白「本当にやるか?」
奥の襖から白がぬっと姿を見せる。白と健二の顔を交互に見る。
今眼前には反省した先の健二(未来)と理想の健二(未来)がある。決められないと思った。どちらも理想通りかも知れないと思った。
ただ、ふと部屋の隅に飾られた小さい頃の写真が目につく。私が元気で素直な健二を好きになった頃の写真。健二の寝顔を見る。そして唾を飲んだ。
晴香「たぶん……私の理想は過去にしかない……」
無機質に私がそう言うと白は耳まで裂けそうな歪んだ笑みを見せて言った。
白「では……"治そう"か」
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