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奇妙な香り、ヘッドホン、そもそもあの不純物もその類だったのかも知れない。白の異様な行為は言うまでもなく医療的な手術とは似ても似つかず、むしろ儀式の様に思えた。笑い声が響く。
白「ははっ!君は大野晴香に素直で優しいんだ!そう、幼な子だったあの頃の様に!!そして料理が得意で頭も良い……目覚めたら大野晴香を大切にするんだ。それが君のあるべき形……さぁ"治れ"治った君はそういう人間だ」
あぁ、まるで儀式だ。歪んだ笑みで踊り狂う白と、椅子に縛られ魂さえ抜け出しそうに口を開いて昏睡する健二、私の心から飛び出した白い悪魔が嬉々として踊る一際異形の儀式だった。
晴香「……ごめん」
儀式の終盤、自分でも言葉にできない涙と言葉が溢れた。
儀式は深夜まで続き、気づけば私は眠っていた。朝になって目覚めると、そこには白も健二もいなくなっていて、奇妙な儀式の残り香さえもなくなっていた。
晴香「夢……じゃないよね」
全てが消えた今でも私はそれが夢でなかったと確信出来た。強烈な記憶、葛藤の末の決断が、それを夢じゃなかったと理解させる。朝の準備を済ませる。学校で健二に会えば全てわかる……そう思った時だった。
"ピンポーン"
インターホンが鳴る。ボタンを離すのが遅くて微妙に癖のある音が呼び出した相手が誰か分かり驚く
晴香「け……健二!?どうして」
健二「どうしてって、迎えに来たんだよ?晴ちゃんを」
私は呆気にとられた。健二の家は近いけど、一緒に通学なんて小学生以来だ。なぜなら健二は野球の朝練があって……はっとする。
晴香「健二……野球は!?」
慌てた私に不思議そうに微笑む健二。
健二「朝練が終わったから、家に帰ってシャワーを浴びて迎えに来たんだよ。晴ちゃん汗臭いの苦手でしょ?どうしたの今更……?さ、遅刻しちゃうよ?」
そう言って健二の手が私の手首を掴んだ。
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