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「~~~♪」
フユキは、楽しそうな鼻歌を歌いながら歩いていた。
先程は一触即発の空気だったのにも関わらず。
「ーーーどういうつもり?」
フユキの行く先に、1人の女が壁によしかかっていた。
「ん?あらあら、夏樹ちゃんやないの。元気しとる~?」
両手を振りながら近付くフユキ。
「………やめて、気持ち悪い。」
キツイ言葉が投げかけられた。
「あれま、キツイね~。もっと優しく、柔軟にいけたら夏樹ちゃんも可愛いのにね~。」
フユキはそう言うのに対して、『海原 夏樹』は表情を変えずに、寧ろノーリアクションで佇んでいる。
「無視は結構キツイなぁ。」
それでもフユキは変わらず笑顔は消えてなかった。
「ーーーなんで、あの男の子に出現したばかりのジュエルを渡したの?」
「あれ、見られとった?いやいや恥ずかしいなぁ。」
「答えて。ふざけてるの?」
夏樹は少し苛立ったのかバックルを構える。
「おぉ怖い怖い。いや何、折角生まれた力をテストするには、誰かに使わせないと話が進まないやろ?」
「でも彼、ベルト持ってないじゃない。」
呆れたようにその言葉を吐く。
「………世界の流れっていうのは、木の根っこみたいなもんや。
元の始まりは1本。そこから先は無数に、色んな道が広がっていく。それぞれどのような事が起きてどのようにして進んでいくのか、それは、その世界の住人にでもならない限り、永遠に交わる事なく、そして知る事も出来ない。
でも、今いるこのたった1つの世界でも。十分に色んな出来事が起こり始めている。その中で、『少年が偶然道に落ちているベルトを拾う』何て事が起きても不思議じゃないし、その可能性もあると言う訳や。だから、あまり常識に捉われ過ぎて生きるのは、勿体無いと思うで?」
まるでストーリーテラーのような長い話を、フユキは淡々と喋っている。
「………アナタ、その語り癖やめたら?長いのよ話が。要するに、あの男の子がライダーになる可能性もあるって事でしょ?」
「まあそうやね。」
「………そして、私達の味方になるとも限らない。」
「彼は悪役よりもヒーローが似合うとるよ。その方が彼らしいし、その方が……面白くなる。」
いつも笑顔でいるフユキだが、その言葉だけ、その笑顔は妖しくなった。
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