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夏樹と待ち合わせしたのはあの、出会った曲がり角だ。彼女はそこにいる。男は俺と彼女SNSのやり取りでそれを確認したんだろう
「っぐ……!!」
体を動かそうとするが力が入らない。巡るべき血液は、腹部から口からと徐々に自分という存在から零れ堕ちて行く。このままいけば、俺と言う存在が意味をなさない人形になるのは目に見えている
チカラが、ハイラナイ
イタイイタイイタイ
イタイイタイイタイ
イタイイタイイタイ
シヌ?シヌ?シヌ?シヌ?シヌ?
思考力が薄れていく。このまま倒れれば万に一つの可能性で助かるかもしれないが
無理に動けば、確実に死ぬ。そもそも動けないのだが、そんな絶対の予感があった
(ヤバ……………景色、キエテ…く………)
『うーん……私なら。せいぜい大切な人を護れれば上出来でしょうか?』
……………!
意識の暗闇に落ちる寸前で何時か聞いた言葉が聞こえて俺を繋ぎ止めた
『私にとってのヒーローは……藤花さんですよ?』
ソウ、だ……ソ、うだ……………そうだ
大切な人を護りたいと、彼女は言った。
そして、俺なんかをヒーローだとも彼女は言った。
もし、彼女のヒーロー像が大切な人を護る者なら
俺は………
『ーー好き、なんです。 そんな藤花さんが……大好きです』
「……俺は、夏樹を護る。それが俺の、彼女への気持ちなんだから」
消える意識を呼び覚まし、少ない血液で体をお越し、大切な彼女の名を口にする。
時間は刺されてから10分も経過してたが、まだ間に合う。いや、間に合わなくてはならない
俺はバイクに乗り込み彼女と出会ったあの場所に向かった
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