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「藤花、さん……その、傷……いや……いや……」
俺の背後の夏樹が立ち上がった音が聞こえて振り返る。
ああ、浴衣も綺麗だなーー
なんて、その姿に目惚れて、ようやく張りつめた緊張の糸を切ると僕は夏樹にもたれ掛かってしまう
「ごめん、重い……?」
「私の心配、なんて……違う、駄目……藤花さん、ヤダ!!」
また、意識が遠退き始める。だけど今度は恐ろしい程に痛みがない……ああ、死ぬ。もうすぐ死ぬ。伝えたい事がいっぱいあるのに、何から伝えればいいんだか……
「夏樹、誰も悪くない……だから、恨まないで、きっとそれ、辛いだけ……だから」
「あと、あと………夏樹、これから、辛くても、負けないで、夏樹なら……出来るし」
「止めて!!そんな話したら、藤花さん、!」
「これからも俺は、見護り続けるから」
不安はある。俺がいなくなった後に誰が彼女を護るのか……彼女は笑って、幸せになれるのか……でも、俺はもう信じる事しか出来ないから……少しでも彼女の不安をかきけして……
「ありがとう」
最後はもう感謝しか思い浮かばなかった。だが、仕方ない。
それが俺の………俺をヒーローだと言った、好きと言った彼女へ、の……………………………………………
ーーーー
穏やかな顔だった。まるで心地よく眠ったるような穏やかな顔………でも、もたれ掛かる彼の体から伝わってた鼓動は、もう……もう………
「っっっーーー!!!!」
理解した。理解してしまった。彼は死んだんだ。私が愛した人は……今この瞬間に私の手の中で死んだ
涙が溢れる、膝の震えが止まらず彼と一緒に崩れ落ちる。
彼の体を強く抱き締める。手には生暖かい赤がべっとりとついていたが、気にもせず私は……
ただ、泣きじゃくることしか出来なかった
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