1章 私の罪 前編

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あれから2週間の時が、流れた 男は今度こそ警察に捕まり、今回の件は刑事事件としてマスコミにもとりあげられた。2週間経って漸く外出もしやすくなったというものだが…… 今日は台風が接近してるとかで雷雨だが、どうでもいい 私は1人、海に佇む。隣にあの人はいないってわかってるのに、わかってる筈なのにすがるように隣を確認した自分に嫌気がさした 「……あの男に二度と会うことはないと思います。藤花さんのお陰です……わかってます。恨みませんよ」 幻覚を見てる訳ではない。ただの独り言だ。私は彼の言葉を守り、あの男を憎まない……。 それに、それ以上に憎むべき存在を理解してる 「私が貴方を巻き込んだから、貴方が死んだ……私に会わなければ、死ぬことなんてなかった!!」 誰も憎まない。何故なら、根本を辿れば私だ。私が弱いから、巻き込んで、護れもせずに、護らせて、死なせた。 大切な人を護れたら上出来? ならなんなんだ?大切な人を見殺しに、身代わりに生き残った私はなんだっていうの!? 「私が、私が……貴方を、死なせたんだ……!!」 首にかけられたペンダントを握りしめる。後悔、自身への怒り、憎しみと言った負の感情が握る力を強くする。 殺した、見捨てた、愛した、なのに死なせた、護れなかった 見上げた空に星は無く、波は私の心を現すように荒れ狂う もう、笑うことも出来ない。 それでも私は生きていく。彼が残した言葉を無駄にしない為に これが彼への償いに等ならないと知りながら 私は、彼を殺した罪と、生きていく。
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