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「なんだ、お前?」
男が私の背後にいる人を睨み付けると、『カシャッ』と、シャッター音が聞こえた。
「何撮ってんだよ!?」
「何って、ストーカーの顔さ。ほら……警察に届ける時に必要だろ?」
背後の声は男性だったようで、私をそっと自分の後ろに引っ張って匿うような位置に立ってくれた。
浴衣を来ていた為か、妙にどっしりと構えてるように見える彼の背中に思わず安堵の息が溢れてしまう
「ふざけんな、写真消せやっ!!」
男が携帯目掛けて襲い掛かって来るのを、浴衣の人は落ち着いていなして、その際に足を引っ掻けて転ばせた。
「近くの交番まで走って、急いで」
そう言って彼は私に自分の携帯を渡す。私は彼の指示に従って無我夢中で商店街に戻り、交番に駆け込んだ。男は追ってこない。浴衣の人が足止めしてくれたのだろう。
私が警官に駆け込んで来た経緯を伝えると、警官は祭りの見回りをしている同僚に連絡をとり、二人の元へ向かわせた
暫くして、浴衣の男のみが警官と一緒に交番に入って来た。男は警官が近づくと逃走したとか。
私の被害届けと、浴衣の人が撮った写真、おまけに彼の頬の傷から、すぐにでも男を探し始めるとの事で
私は両親が迎えに来るまでここで待つ事となる
「あ、あの……ありがとうございましたっ!!」
「ん?いや……俺は偶然居合わせただけだよ。お礼なんて……」
「い、いえっ!!貴方様がいなかったら、本当、本当ーーに、どうなってたか!!」
謙虚な浴衣の人の言葉をはね除けて頭を下げると、突然彼は吹き出した………なんで?
「はは、貴方様って……、藤花 奏。藤花でいいよ」
彼は……藤花さんは、自己紹介をしながら優しい笑みを溢した。それは彼の背中と同じ……どこか安心するような、そんな笑顔だ
「わ、私は!……えっと、夏樹です。海原 夏樹。〇〇高校に通う2年生です。よ、よろしくお願いします?」
私は慌てて自己紹介しようとした自分を押さえて、一度落ち着いてから彼に名乗る。結局、よろしくだなんて不自然な言葉が出てしまったのだが……
「ーーああ、よろしくね、夏樹さんーー」
これが私ーー海原 夏樹の初恋であり、最初の罪との邂逅だ
私は赦さないーー彼を●した●●●をーー
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