1章 私の罪 前編

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こうして、ライダーという趣味を通して私と彼の距離は少しずつ近づいていた。 彼も近づいてくれたのか、私が一人で近づきすぎただけなのか 「……ジョーカー、いいですね」 「わかる」 休日は独り暮らしの彼の自宅で一緒に映画(主にライダーもの)を見るまでになった。 尚、この台詞が該当する作品は複数あるので何を見てたかは想像にお任せします。 「あーー、面白かった」 「ふふ、そうだね。はい。」 エンドロールが流れ終わった頃に、藤花さんが空になってた私のカップにココアを注いでくれた。出会ってから5ヵ月。季節は既に冬に突入していたので、暖かいココアは嬉しい限りだ 「実際、こんな事件に巻き込まれたら何にも出来ないでしょうねぇ……」 映画を振り替えって何気ない一言をぼやいてみると 「意外と、夏樹は結構行動力あるからじっとしてられないかもよ?」 「ライダーにでもなれるんなら、私だって頑張るかもですね」 藤花さんはDVDをケースに戻しながら私を見て、そんなもしもの話をする。 「たまに想像するよね。ライダーになったら~って。夏樹はさ、本当にそうなったら何の為に戦うんだろうね」 確かに、笑顔とか居場所とか、まあ始まりからして人々の自由とか。それぞれに戦う理由はあるから、ふと考えて見るのも面白くはある、が…… 「うーん……私なら。せいぜい大切な人を護れれば上出来でしょうか?」 と、我ながら恥ずかしいことを口にしたことに気付き、思わず赤面して俯く。ああ、きっと彼は笑ってる。純粋にニコニコ笑ってる。だから余計に恥ずかしい。 「良いじゃないか。夏樹らしい」 「でも、でも……なんて言うか……その。私にとってのヒーローは藤花さんですよ?」 顔を上げて言葉を紡ぐ そうだ、出会った時から彼は、私にとってのヒーローだ 護ってくれた背中に、優しい言葉に憧れて…… そして、藤花 奏という人間に触れる内に思って、想ってしまった 彼の隣を一緒に歩きたい。そしていつか、彼の……助けになりたいと だから……この機会に、怯えながら口にする 「 ーー好き、なんです。 そんな藤花さんが……大好きです」 雰囲気もタイミングもチグハグな、今にも消えてしまいそうな言葉を 「ーーありがとう、夏樹」 暫しの沈黙の後に、言葉と一緒に頭を優しく撫でる感触があった。 それだけで、答は充分だった。
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