5人が本棚に入れています
本棚に追加
それからはまた少し時間は進み、再び夏が巡る
私は彼、藤花さんをお気に入りの場所に……夜の海に誘う
流石に泳ぐのは彼が危ないので。あくまで砂浜の散歩だ。
彼のバイクに乗せてもらった時に感じる風も気持ちいいが、海の潮風をまた違った良さがある
「へえ、いい場所だね。静かだし、波打つ音も心地良い」
「此処は BBQも花火も禁止だから夜は人が来ないんです。その中でも特に人が来ない場所を選びましたし」
と、私は自分の事のように自慢げに胸をはって歩きながらサンダルを脱ぐと、波打ち際の方に歩いて行く。
足に感じる冷たさが、夜は思ってたより肌寒く。少し頭が冴えた気がした
「ーー夏樹、これ着けてくれる?」
背後から彼の声が聞こえたのと同時に私の頭に何かかけられる。
首を通ったそれを確認するとそれは、金色のペンダントだった。
「え?綺麗……ですけど、なんで?」
「今日なんだ、去年……君に初めて会った日」
ああ、そうか……あれから一年。私は彼と、少しずつだけど時間を重ねていたんだ
「……です」
「な、夏樹?」
これは駄目だ
「嬉しい、凄く、凄ぉーーくっ!!嬉しいです!! 」
駄目だ、駄目だ、駄目だ。込み上げる喜びを押さえきれない。まるで子供のように騒ぎながら彼の腰に思い切り抱きついた。
彼の体温が暖かい。頭を撫でる手が心地よい。彼の全てが……愛しい。
海の音だけが聞こえる静寂の中
私達は暫くの間、無言でお互いの命(暖かさ)を確かめあっていた
最初のコメントを投稿しよう!