最期のレストラン

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「にんげん……あれは、人間なの?」 シムの言葉に、少なからず衝撃を受けた。 地獄へ運ばれて行った人達を思い出す。 誰も彼もが不潔で、粗野で、後悔の念はなく、自分以外の全てを憎んでいるような顔をしていた。 閻魔のおじさんの言うとおり、ほとんどの人は天国行きになっていて、地獄のトラックに乗ったのは一握りだった。 「サキ。地獄とは、なんだと思う」 シムの質問は簡単そうで難しい。 「え? 地獄、地獄……うーん。悪い人が、死んで行くところ?」 高校生にしてはちょっと頭の悪い回答だったと思うけど、それしか咄嗟には思いつかなかった。 「地獄というのは、罪を洗い流す行の事を言う」 「ぎょう……」 「1丁目から99丁目まで、地獄に堕ちたものは順に通り、生前の業を洗い落としていく」 「ごう……」 私の顔が余程間抜けだったのか、シムは呆れた様子で話を噛み砕いた。 「つまりサキが見たのは、地獄での行を勤め上げた者だ」 うーん、と少し考えてから言った。 「じゃあ、罪を償ったってこと? 消えたのは、転生したの?」 そんな私の回答を、シムはせせら笑って否定した。 「ふん。あいつらは、業を洗い流すと同時に、同じだけ人間らしさも失っていく。ここへ辿り着く頃には転生できるような代物じゃない。あいつらに待っているのは、完全な消滅だけだ」
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