39人が本棚に入れています
本棚に追加
次の日は仕込みを手伝った。
でも料理なんて全くしたことがなかったから、玉ねぎの微塵切りで盛大に指を切った。
今まで彼氏がいた事がないから料理を作る機会など無かったのだ。
「わっ、血が出た!」
それに、痛い。
「当たり前だよ。地獄では血も出るし痛みも感じる。天国に行ってしまえば苦痛とはおさらばだけどね」
シムは全然使っていないらしい救急箱を棚の奥から見つけて、その中から絆創膏を取り出した。
滴る血からは生命のエネルギーをこんなにも感じるのに、私は確かに死んでいる。
「天国では痛みを感じないの?」
「ああ、痛みも怒りも悲しみも無い」
「なんかそれって、気持ち悪くない?」
別に痛いのが好きとかいう訳じゃないけど、なにか違う気がする。
「そう思うなら、さっさと転生すれば良い。天国でずっと暮らしている人もいれば、死ぬ度に転生を繰り返す人もいる」
「シムは?」
「ん?」
「シムだって人間でしょ? なんでここでレストランをしているの」
最初のコメントを投稿しよう!