最期のレストラン

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翌日。朝から地獄は雨だった。 時間という概念が無いので朝と言って正しいか分からないけど、とりあえず私が起きてからはずっと雨。 さっきまで酸の雨が降っていたのが、今しがた針の雨に変わった。 「お世話になりました」 今日は鬼が迎えに来る。 私もいよいよ天国行きだ。 「危ないから、雨が止んでから行きなよ。ゴーシュにもそう連絡する」 シムはとても親切でいい人だった。滞在は短い間だったけど、もうこのレストランに来られなくなると思うと寂しい。 ーーカランコロン ドアベルが鳴る。 「忌々しい雨だ。最近の地獄天気予報は当てにならない」 入ってきたのは私に地図とサンダルをくれたあの賢そうな鬼で、鬼が頭や肩を払うとバラバラと無数の針が床に散らばった。 私は急いで箒とちり取りを用意して床を掃きだしたけど、落ちているのは正真正銘の針で、よくもこの雨の中を平気で歩いてきたものだと感心した。 「こんにちはゴーシュ。予定より早いね。もうすぐ一人、お客が来るところなんだ」 「ああ、どうぞ好きにやってくれ。雨宿りがてらに寄らせて貰ったんだ。私ももう少し仕事があってね。そちらの用事が済んだらお嬢さんを連れて行くよ」 鬼はそう言うと勝手知ったるという感じでカウンターの中に入り、狭い厨房の一角を陣取って座り込んでしまった。 私が戸惑ってるのを感じ取ったのか、シムは「ほっといていいよ。ゴーシュはマイペースなんだ」と肩を竦めた。
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