白と赤の日々

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「せっかくなのでさよさんも一緒に撮りませんか?」 「えっ私もですか?」 「はい、手伝ってもらったし、僕もさよさんと撮りたいです。確かそのカメラってタイマーありましたよね?」 「で、でも蓮様は……。」 さよさんはいまだに蓮様に嫌われてる云々を気にしていたらしくチラチラと蓮様を見ている。 「……俺は別に撮っても良い。」 エナガがいなくなってテンションが元に戻った蓮様が遠回しに誘う。 「そ、それじゃあ……、」 さよさんはタイマーをセットして急いで僕らの隣に並ぶ。左から蓮様、僕、さよさんで並ぶ。 ピピッカシャッ! 軽快な音を立ててシャッターがきられた。 後日さよさんが現像してくれた写真を手に離れを訪れた。 「蓮様ー写真の現像をしてもらいましたよ。」 「ああ、あれか。」 部屋の端に置かれた文机の上で写真を広げる。 「結構撮ったんだな。」 「ええ、そうみたいですね。そして無表情も多いです。」 「……可笑しくもないのに笑えるものなのか?」 「少なくとも蓮様と僕には無理みたいです。」 とても笑顔とは呼べない表情の写真が一枚あったのでそっと裏返した。 「そういえば、この時の蓮様すごい言葉少なでしたけど、どうしたんですか?」 「……初対面の人間といろいろ話せるほど俺はフレンドリーになれない。」 ああさよさん、安心してください。かつてあなたがシカトされていたのは恐らく嫌いな訳じゃなくて、単なる人見知りなだけでした。 蓮様の膨らませたほっぺを指でつついて空気を抜くとプシューと間抜けな音が出た。 「あっ。」 「なんですか?」 蓮様が小さく声を上げて手に取った写真を覗き込むと、頭にエナガを乗せた蓮様とそれを見ている僕が写っていた。 「これはちゃんと笑えてますね。」 無表情やぎこちない笑顔とは違う自然な笑顔。 「この時も撮ってたんだな……。」
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