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「いらっしゃいませ」
自動ドアを潜って入ってきたブルーグレイのスーツ。
長身で姿勢のいい歩き方と、
後ろに流した少し癖のある明 るい色の髪。
――あの人だ。
いつも夜に来ることの多いその人。
午前中に来るなんて、
珍しいな。
昼休みにはまだ早いし…… 何している人なんだろう?
そんな事を考えながら。
新刊が平積みにされている棚をざっと眺めた後で、
その奥へと歩いてい く背中を目で追った。
俺が勤めているのは、
深夜まで営業している大型書店。
店の位置が繁華街から近いこともあって 、
お客は日が暮れてからの方が多かったりする。
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