第1章

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「いらっしゃいませ」 自動ドアを潜って入ってきたブルーグレイのスーツ。 長身で姿勢のいい歩き方と、 後ろに流した少し癖のある明 るい色の髪。 ――あの人だ。 いつも夜に来ることの多いその人。 午前中に来るなんて、 珍しいな。 昼休みにはまだ早いし…… 何している人なんだろう? そんな事を考えながら。 新刊が平積みにされている棚をざっと眺めた後で、 その奥へと歩いてい く背中を目で追った。 俺が勤めているのは、 深夜まで営業している大型書店。 店の位置が繁華街から近いこともあって 、 お客は日が暮れてからの方が多かったりする。
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