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「さてさて。後継者は、現れるでしょうか。」
老紳士は、楽しそうに呟く。
彼こそは、四半世紀前に騒がれた義賊中の義賊。
華麗に活躍し、最後の盗みののち、すっぱりと噂を聞かなくなった。
引退してのち、ここで受付をしている。
各ドアの向こう側にいるのも、客たちにスキルを伝授するのも、それぞれの『賊』を極め、名を挙げてのち無事に引退した者たちだ。
そんな賊は、数が少ない。
ほとんどは、捕らえられて投獄されたり処刑されたりする。
それでも、賊になりたいと希望する者たちはあとを絶たない。
「義賊の部屋」のドアの向こうにいるのは、老紳士の弟子だった元義賊だ。
数少ない義賊の技を、精神を、あの青年は引き継ぐことができるだろうか。
今日もまた、ドアが開く。
音もなくドアが開く。
入ってきた者へ、やはり音もなく老紳士は近づき、告げるのだ。
「いらっしゃいませ。ようこそ『賊屋』へ。どのような賊をお望みですか。」
終.
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