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重厚な店のドアは、その大きさと重さに関わらず、音一つ立てない。
チャイムなどというものはなく、どうしても訪問を知らせたい人のために、真鍮のノッカーがついている。
そのドアを開けて、まだ20代前半とおぼしき青年が、店内に入ってきた。
中は、しーんと静まり返っている。
広いロビーのような空間には、待合室らしい長椅子が二つ。
そして、そのロビーの奥には、いくつものドア。
「いらっしゃいませ。ようこそ、賊屋へ。」
不意に声をかけられ、青年はぎょっとした。
今の今まで、気配が感じられなかったからだ。
そこに立っていたのは、品のいいスリーピースを着用したにこやかな老紳士。
髪は、白髪というより白銀に染まりつつあった。
目元の深いシワを、さらに深くして微笑む。
「私は、この店の受付でございます。お客様のご希望される『賊』をお聞かせくださいませ。」
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