第1章

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「まず、義賊というからには、貧しいところから盗んではなりません。」 「当然だ。俺はスラム街の出身で、貧しさの何たるかをよく知っている。」 「次に、盗んだものの7割以上は、私有してはなりません。施すのです。己の財産は増えないとお考えください。残りの3割以下で、次の準備をなさってください。」 それを自分のものにしてしまえば、それは義賊ではなく、単なる盗賊、強盗の類いだ。 「己の成功を、誇ってはなりません。成功を重ねて行けば、自然と名声は高まるもの。それを自ら名乗り売り込み名声を世間に強要するような真似は、義賊の品格を落とします。」 さらに、盗みに入った先でも殺生暴力の類いは、一切禁止。 誰かを傷つけた段階で、『義賊』は『凶賊』に変わる。 美しい令嬢がいても、色香溢れる女主人がいても、命乞いをする可憐な小間使いがいても、絶対に手を出してはならない。 「おのれの欲に負けるような賊は、下の下でございます。そのようなことが明るみになれば、軍隊警察だけでなく、賊屋の全店が、賊屋を卒業して立派に一人立ちをした本物の義賊たちすべてが、あなたの敵にまわりましょう。」
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