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「いいんだ。 両親が素直に警察に話してくれればいいが、今回の失踪に関しても真っ先に警察ではなくこっちに来たくらいだ。 事が大きくなればメディアが大きく取り上げる。そうなると桜庭千絵子が『夢に殺される』などの妄言を吐いていたことが全国ネットでお茶の間に流れる」 「つまり?」 「桜庭千絵子はキチガイだった、という事が世間に知られる訳だ。キチガイの親、と後ろ指指されたくなかったとしか考えられん」 5個目のショートケーキを胃袋に詰め込んだ榎浪さんは不愉快そうな顔で告げた。その向かいで摘花さんが6個目のチョコレートケーキにフォークを入れてため息をつく。 「全く…。でもありがとう。だいぶ初動が楽になりそうだ。彼女の通っていた高校は、夜津南校で合ってるかな?」 「ああ、合ってる。ここからは警察の仕事だ。任せたぞ」 「分かった。これから行ってみる。じゃあ会計よろしく」  僕らは店を出て榎浪さんと別れた後、資料課に戻って状況を説明した。課長は未だヘソを曲げたままだったので、課長以外の全員で会議を行なった結果、明日、夜津南高校への事情徴収に行く、という事で同意し、真木さんが学校側に話を通してくれた。 「というわけで明日の16時ごろに行くことになった。クラスメイトからも話を聞くならその時間帯がいいだろう、と向こうから」 「わかりました。それで…どうします? 向こうに行く人は」 「俺と海藤で行こう。霧峰はその足だと階段の昇り降りがきついだろうから」 視線を足元に向ける。真木さんも足が少し悪いと聞いていたが大丈夫なのだろうか。 「俺は電話した本人だからな。行かないと。足の心配はするな」 今ではもう古傷だ、と彼は微笑んだ。 「真木センパイ、今日は課長もヘソ曲げたまんまなんで帰っていいっすかね」 「ああ。課長には俺から伝えておく。じゃあ、みんなゆっくり休んでくれ」 いつも通りの定時に帰宅。しかし、今朝の夢の続きを見るのではないかと思うだけで、心は重くなってしまった。
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