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 ノイズ混じりのアナウンスと共に鋭い悲鳴が上がる。 見れば、あの女の子がピエロの格好をしたナニモノかに襲われているではないか。 止めなければ。そう思って立ち上がろうと腰を浮かせたとき、全ての影が一斉にこちらを向いた。その目は全て僕を射抜き、「止めるな」と威圧しているようだった。座りなおすと、影はまたニタニタと"殺人現場"の方へと向き、鑑賞をすることに没頭していた。 女の子の腹が、喉が引き裂かれる。彼女はもう、叫ぶことすらできない。 はらわたを引きずり出し、ピエロはその手に持った鉈で器用にソレを叩いて細かくしていく。 ダメだ。もう僕には直視できない。  目を閉じ、耳を塞いで悪夢が終わることを祈ったが、轟音のような拍手がまた、僕を夢へと引き戻す。 影達の視線の先を恐る恐る辿る。そこには、割かれた腹部を皿にした、少女の"活け造り"があった。あまりの凄惨さに、僕は目眩を起こし、そして倒れた。  気がつくと、そこは自室のベッドの上で、カーテンの隙間から差し込む朝日が顔に直撃していた。普通なら「よく寝た」なのだろうが、今の僕には吐き気しかなかった。 トイレに篭ること数分。出てきた時にはもう吐き戻すものが無くなっていた。 息をつく暇もなく出勤時間が迫っていたので、軽くシャワーを浴びてから出勤した。
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