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 夜津市警察署地下1階第二資料室。ここが僕の所属する"資料課"だ。資料課は様々な怪異絡みの事件を解決するための部署だが、表向きにはその存在を認知されていない。そのため、少し捜査がやりづらかったりもする。 「おはようございます!」 いつも通り、同期の風間が声をかけてくる。年下だが、配属は同時期だったので彼女とは同期と言えるだろう。今、部屋には彼女しかいないようだ。いつもなら課長や、朝が早い真木さんもいるのだろうが、姿は見受けられなかった。 「課長は用事があってお昼頃来るそうです。真木さんは今日は病院へ行ってから来る、とさっき連絡が」 「霧峰さんは?」 「夜勤が入っていたので、今、仮眠室に」 なるほど。では今日はしばらく2人なのか。何事もなければいいが。 そう思った日ほど、厄介な事件が舞い込んでくるのはいつものことで、あの時も例にもれずそうだった。  内線電話が鳴る。受話器を取った。 「はい、資料課です」 今では電話口で噛むことも、課を言い間違えることも無くなった。 「摘花です。その声は……海藤さん、かな」 だいぶ幼く聞こえる声の主は摘花さんだった。彼は資料課に所属していて、ここにいる全員をもってしても賄えない『鑑識』と『検視』を担当している。傍目から見てもいつも仕事に潰されていて、正直なところ、休んでほしいと思ったことも何度かあった。 その話は一旦置いておくとして、彼が電話をかけてくる、ということは何かあったのだろうか。 「課長か真木先輩は今いますか?」 「いや、2人とも用事で席を外してます。課長は昼頃戻ってくると」 電話の向こうで唸る声が聞こえる。
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