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「その、急用なんだ。2人は現地経験浅めの方だしちょっと心配なんだよ。霧峰は夜勤明けだし寝てるよね」 「はい。……その、何があったんですか?」 彼の話によると、先ほど、夜津川河川敷で遺体が発見されたそうだ。しかしその遺体がだいぶ悲惨な状況になっているらしく、一応資料課の方でも立会人を出してほしい、との依頼だった。 「よろしければ僕が行きましょうか?」 「その、鑑識の人らも近づけないほどだけど大丈夫?」 「へ、平気です!」 何事も経験だ、と僕は意気込んだ。では、現地集合で。と電話を切って手早く支度を済ませる。どこかに行くんですか?という風間の質問に、現場での調査の立会いと、返し、意気揚々と出立した。  夜津川の河川敷は野次馬でごった返していた。なんとか掻き分けて規制線の中へと入る。 「人の死はエンターテイメントなのよ」 霞んでいる遠い記憶の中の誰かが、言っていたような気がした。 「やあ。ちょっと遅かったね」 ブルーシートの天幕の前で、摘花さんが既に臨戦態勢で待ち構えていた。 「心の準備はいい?」  微笑む彼の後ろについて天幕の中に入る。普段ならこの中では鑑識の人たちが忙しそうに動いているのだが、今は静かすぎるくらいだ。 「なるほど、こりゃひどい」 目の前には遠目から見ても異常とわかる遺体があった。 「無理せず、きついと思ったら休んでいいから」 僕は小さな声でハイ、としか言えなかった。抵抗なく近づいていく彼の後ろを、恐る恐る、ゆっくりとしか進めない自分に少し悲しくなった。 「これは調べがいがありそうだね。身元がわかるか微妙だけど」
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