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 イートインスペースも完備しているこのパン屋は、洋菓子も扱っている少し変わったお店だ。昼時はいつも混んでいて店主と店員の二人で切り盛りしていると大変そうに見える。 ランチタイムはとうに過ぎているので、今は静かだ。 榎浪さんのおごりらしく、摘花さんはいつもより多めにスイーツを頼んでいた。 「で、身元に繋がるとか言っていたがどういうことなんだ」 「そう焦るな。この少女に見覚えはないか?」 取り出した写真の中に映る一人の少女を彼は指差す。全員同じ制服姿なので学校で撮ったものだろうか。 「……遺体の写真と照らし合わせないと分からないな。少しいいか」 写真を受け取った摘花さんは手元の遺体の写真と照らし合わせる。少し唸った後、彼は首を横に振った。 「制服のエンブレムはどうやら同じもののようだが、遺体が彼女かどうかは断定できないな」 「そうか。流石に仕方がないな」  写真が仕舞われる横で、摘花さんの携帯に着信が入ったようで、彼が席を外した。彼が戻ってきた時、少し顔が晴れやかなように見えた。 「遺体の身元が分かったよ。桜庭千絵子、市内の高校に通う子だ」 榎浪さんは顔色一つ変えず手帳を取り出し、「なら話が早い」と続けた。 「その桜庭千絵子だが、一週間前にご両親からうちに依頼があった」 「家出人の捜索について…ですか」 「そう。情緒不安定 、不眠を発症していた彼女が、一週間程前に忽然と姿を消した。そして今、死体となって上がった。事故死とも取れそうだが、遺体の状況じゃあ他殺だろ。刑事課にぶん投げろ、と言いたいところだが、少々妙でな」 「妙?」  思わず身を乗り出してしまう。落ち着きたまえ、と彼が手を上げたのを見て慌てて席に座りなおした。 「夢に殺される。だから眠りたくない。彼女はそう喚いていたとご両親が」 夢、と聞いて今朝見た夢を思い出した。夢の中で無残に殺された彼女が、もしこの桜庭千絵子なら、彼女の言った通り、夢に殺されたと言える。ただ、自分がその夢の子細をはっきりと思い出せないのでどうしようもない。 「もし、本当に夢に殺されたのなら、刑事課ではなく君達資料課の管轄になるだろう」 「でもいいんですか? 依頼の情報を喋ってしまって」
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