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「津田さん?」
小さく呼びかけると、津田さんの肩が次第に大きく震えだす。
「ちょっと津田さん。どうしたんですか?」
驚いた柴垣くんが津田さんの元に駆け寄ろうと腰を上げたとき。
「ふっ……はははは……」
突然津田さんの笑い声が小会議室に響き渡った。
「津田……さん……」
「なんなんすか……え……?」
状況の把握が全くできない私達は、津田さんの爆笑にさえもオロオロと戸惑っていた。
次第に笑いが治まり、目尻に溜まった涙を指で拭いながら、津田さんはゆっくりと大きく息をついた。
「はああ……。ごめん。ちょっと意地悪が過ぎたみたいだ」
『意地悪』
そのワードに私達は一気に脱力した。
そして……。
「ちょっと津田さん!いったい何なんですか!俺本気で焦ったんですけど!」
「私もです!一気にいろんな悪い事考えちゃったんですからっ」
二人で津田さんに猛攻撃だ。
わいわいと喚き始める私達に向かって津田さんは、「だから悪かったって」と心にも思ってなさそうな顔で言ってのけた。
「そりゃ意地悪の一つもしたくなるだろ。三崎さんにスッパリ振られた俺が、足踏みしてる二人を焚付けるなんて一番つらい役を買って出たんだから」
口を尖らせてそう言う津田さんに、私達は何も言えるわけなどなかった……。
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