episode 1

18/34
前へ
/527ページ
次へ
真っ直ぐに向けられた彼の視線が厳しくて私は思わず目を逸らす。 「な…何やってるの?こんな所で」 「給湯室の確認。何がいるのか何があるのか。それがわからないと茶も入れらんねぇから」 「そか…」 「それともこの課は優しい『三崎さん』が笑顔でいつでも入れてくれるわけ?」 ぐっと言葉に詰まる私を見て柴垣くんは溜め息をついた。 「ここでは三崎がお茶当番なのかって聞いたら、アイツら『三崎さんの入れてくれたお茶は特別美味しいから』って笑ってたぞ」 「…そう」 お茶くみなんて私の仕事じゃない。 そう言って跳ね除けたい時期もあったけれど。 お客様がいらっしゃれば心象がいいから。 上司や同僚には煽てられ…いつの間にか自分で自分の仕事にしていたように思う。 「お前、いい加減その仮面みたいな笑顔やめろよな」 「えっ?どういう意味?」 私の質問に答えてくれることなく彼も給湯室を後にした。
/527ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20320人が本棚に入れています
本棚に追加