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真っ直ぐに向けられた彼の視線が厳しくて私は思わず目を逸らす。
「な…何やってるの?こんな所で」
「給湯室の確認。何がいるのか何があるのか。それがわからないと茶も入れらんねぇから」
「そか…」
「それともこの課は優しい『三崎さん』が笑顔でいつでも入れてくれるわけ?」
ぐっと言葉に詰まる私を見て柴垣くんは溜め息をついた。
「ここでは三崎がお茶当番なのかって聞いたら、アイツら『三崎さんの入れてくれたお茶は特別美味しいから』って笑ってたぞ」
「…そう」
お茶くみなんて私の仕事じゃない。
そう言って跳ね除けたい時期もあったけれど。
お客様がいらっしゃれば心象がいいから。
上司や同僚には煽てられ…いつの間にか自分で自分の仕事にしていたように思う。
「お前、いい加減その仮面みたいな笑顔やめろよな」
「えっ?どういう意味?」
私の質問に答えてくれることなく彼も給湯室を後にした。
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